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2009年2月

―※―

 10分ほどすると、ピロロロ、ピロロロとメールの着信音がした。テツヤからだった。

 『ミカちゃんでしょ!俺、今ちょうどミカちゃんのこと考えてたんだ。愛の力かも!!メールくれてすっげえうれしい!』

 『名前書かなかったのに、なんでわかるの?』

 『だって、ミカちゃんからの連絡、ずっと待ってたんだもん。』

 そんなセリフ、いくらだって言える。そうわかっていても、うれしかった。

 『仕事中じゃないの?』

 『うん、でも平気。もうすぐ上がれるんだけど、会わない?晩飯おごるから!』

 外を見ると、さっきより雨がひどくなっていた。こんな日に1人でいるのはイヤだ。ただそれだけの理由で、あたしは誘いを受けた。

 シャワーを浴びて新しい下着に着替える。「仕事」のときはスカートで行くことにしてるけど、今日はそんな気分じゃない。その気がないことをアピールしようとジーンズをはいてみたが、雨で裾が濡れるのはイヤだな、と思った。結局、ショートパンツにキャミを合わせ、長袖のパーカーをはおる。軽くメイクをして、待ち合わせのカフェへと向かった。

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―14―

 その日はまったく電話がつながらなかった。朝から降り続いている雨のせいだろうか。あたしはいまいましげに窓の外を眺める。雨の日はなぜかトシオのことを思い出す。その思いを打ち消そうと、あたしはなにげなく携帯の”友達”フォルダを開いてみた。ふとテツヤの名前が目に留まる。なんとなく『さみしい』と打ってみるが、送信せずに消した。『会いたい』。これも削除。『何してる?』と打ってまた消そうとしたとき、間違えて送信ボタンを押してしまった。画面には「送信中」の文字。あわててキャンセルしようとしたが遅かった。メールはテツヤに送られてしまった。まあ、名前も書いてないし、テツヤはあたしのアドを知らない。きっと間違いメールだと思われるだけだろう。そう考えて気にしないことにした。

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―※―

 目が回る。体が鉛みたいに重たい。手が震える。

 薬が切れた。あまりのダルさに、もう1錠飲もうと思い薬の袋を開ける。リタリンはあと1錠しか残っていなかった。明日は診察があるから、これは明日に残しておかなきゃいけない。あたしは睡眠薬を飲んでベットに入る。目を閉じて、この瞬間が少しでも早く過ぎるように、ただただ祈った。

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―※―

 売り上げ2万5千円。それと、テツヤのアドと電話番号。これが今日の収穫だった。あたしの携帯のメモリーには”ブタ”という名前のフォルダがある。そこには今までにヤった男たちの番号が何件か入っている。「また会ってほしい」といわれ、とりあえず登録したものの、あたしから電話をする気は全くなかった。中には月20万で愛人になってほしいと言うオヤジもいたが、特定の客とかかわるのは面倒だった。あたしはテツヤの番号をいったん”ブタ”に入れたが、「ブタはあんまりかな」と思い、”友達”フォルダに移動させた。

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―※―

 テツヤと別れた後、あたしはすぐにツーショットに電話をかけた。客はすぐにみつかった。ホテルで男のチンポをしゃぶりながら、テツヤのことを考える。好きになる気がする?ほんとのあたしを知りもしないで、よくそんなことが言える。こんなことしてるのに。ウリなんてしてる女なんか好きになるはずがない。 

 「あうっ!すごいよ、ミカちゃん・・・もうイキそうだよ。ねぇ、飲んでくれる?」

 あたしは上目遣いで男を見て、手を広げてみせた。プラス5000円。男がうなずくのを確認して、あたしはスパートをかける。口の中にザーメンが注ぎ込まれる。生臭いそれを飲み干して、空っぽの口の中を男に見せてやった。

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―※―

 「今日はありがとう、会ってくれて。楽しかったよ。よかったら、また会ってくれないかな?」

 「え?」

 「イヤかな?」

 「そうじゃなくって・・・ホテル行こうとか言われると思ったから」

 「約束したじゃん。ヘンなことしないって」

 「まあ、そうだけど・・・」

 「ミカちゃんとは、そういうのはイヤなんだ。もちろん俺も男だし?ヤりたくないって言えばウソだけど。ミカちゃんとは普通にデートして、自然にそうなりたいんだよ。会ったばっかの男にこんなこと言われても信じらんないかもしれないけど・・・。俺、ミカちゃんのこと好きになる気がするんだ。だから、もう1回会ってくれませんか?」

 そんなこと言われたって信じるわけない。男の汚い部分はイヤっていうほどみているのだから。バカを見るのはまっぴらだ。

 黙っているあたしを見て、テツヤは焦ったように言った。

 「ごめん。いきなりすぎるよな。なんかアツくなっちゃって。ごめん。じゃあ、俺のケータイ教えるから、その気になったら電話してよ」

 あたしは少し考えて、自分の携帯を取り出して、赤外線受信モードにする。

 「いいよ」

 「えっ?」

 「赤外線」

 「あ・・・。、ちょっと待って」

 あたしの携帯に、テツヤの番号とアドレスが送られてきた。

 「じゃあ、気が向いたら連絡するから。今日はごちそうサマ」

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