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2009年1月

―※―

 最近のテレビの話、恋愛の話、趣味の話。テツヤはすごく話がうまくて、気がついたら1時間が経っていた。

 そろそろホテルかな。そう思って時計をみていると、

 「あ、時間?ごめんね。楽しくって久しぶりにはしゃいじゃったよ。行こうか」

 テツヤは伝票を持ってレジに向かった。

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―※―

 「あの・・・・、ミカ、ちゃん?」

 顔を上げるとそこには、あたしが今まで客にしてきたのとは全く違うタイプの男。

 「テツヤ・・・?」

 すっごいイケメン。清潔感もあるし、服のセンスもいい。いかにもモテそうなタイプなのに、なんでツーショットなんてやってるんだろう。それがテツヤの第一印象だった。

 「びっくりしたー!!ミカちゃんすっげぇかわいいもん。チェックのワンピース見つけたとき、まさかって思った」

 そう言ってテツヤは笑った。

 「テツヤこそ、ふつーにモテそうじゃん。なんであんなことしてんの?」

 「それが全然モテないんだって」

 「そうなの?」

 「出会いもないしさ、さみしくてついつい電話しちゃうんだよね」

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―※―

 待ち合わせは駅前のカフェ。あたしは目印のチェックのワンピースを着て、カウンター近くの席に座る。店内を見回しても、それらしい男は見当たらない。あたしはぼんやりと店員の動きを眺めていた。

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―13―

 「もしもし」

 「こんばんは」

 「こんばんは。あれ、もしかして前にも話したことないかなぁ?そのかわいい声、聞き覚えがあるんだけど」

 「あたしも~。なんとなくそんな気がするんだけど」

 適当に話を合わせる。毎日いろんな男と話しているのだ。いちいち声なんて覚えてられるか。

 「え~っと・・・確か、確か・・・・・・ミカちゃん、だよね?」

 「うん。覚えててくれたんだ」

 誰だっけ、コイツ。と思いながら返事をする。

 「忘れないよ~。すっごい好みの声なんだもん。ほら、前に電話でヤったじゃん。テツヤだけど、わかる?」

 言われてようやくピンときた。ああ、アイツか。あたしの初めてのテレフォンセックスの相手。

 「ねえ、会えない?こうやってまた繋がったのも何かの縁だと思うんだよね。お茶でもしようよ。変なことしないから」

 「んー・・・いいよ」

 お茶だけって言っててもどうせヤるに決まってる。男なんてみんなそうだ。あたしはそれに応えてやる代わりに、金をもらう。世の中ギブ&テイクでうまく回っている。

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―※―

 金に困ることはもうなかった。ただリタリンの量だけがどんどん増えていった。飲み始めたころは半日くらいもった効き目が、今では2時間もしないで切れてしまう。薬が切れると、とにかくダルい。死にたくなるくらいにダルい。息が出来なくなって、手足がすごく冷たくなる。ほんとにこのまま死んじゃうんじゃないかって思うくらい。ダルいから、また飲む。2週間分の薬は3日でなくなった。平山に頼んでも、量を増やしてはくれなかった。

 あたしは気力だけでウリを続けていた。部屋で1人寝ていると、どうしようもない不安に襲われる。そのくらいなら、ハゲでもデブでもいいから誰かと一緒にいたかった。

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―12―

 「遊んでくれる人探してるんだけど・・・」

 そういうとたいていの男は飛びついてきた。3分なんてもうどうでもよかった。直接会ったほうがお金になる。あたしはそれを知ってしまったから。初めての客のことなんて全く覚えていない。気がついたら、ウリをやってた。そんなカンジ。

 会ってお茶をするだけの時もあるし、セックスするときもある。

 「今、金欠なんだよね」

 そう言うと、セックスをしたがる男たちは当たり前のようにお金をくれた。あたしの相場は2万だった。多い日には1日2,3人とセックスをした。リスカの跡が気になったのは最初のうちだけだった。男たちは、おっぱいとマンコがあれば後はどうでもいいようだった。

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―※―

 閉店後、深夜の駐車場。そんなに人目につかないけれど、すぐそばにコンビニがある。万が一なにかあっても助けを求めることはできるだろう。そう考えて指定した場所だった。駐車場に入ると、黄色いTシャツが目に入った。車を降りて近づく。暗くて顔はよく見えない。

 「・・・ミカちゃん?」

 「パンツ、渡すだけだからね。触ったりしないでよ。大声出すからね。」

 「わかってるよ。パンツは?はいてるの?」

 あたしは頷く。

 「こっち・・・」

 道路から死角になる場所に男を誘う。 

 「6千円、交換だからね。」

 そう言ってあたしはパンツを脱いだ。あたしの体温で蒸れたパンツは、いかにも「セックスの後の使用済みパンツ」といった感じがした。

 パンツを受け取った男は、パンツに顔を埋めて必死にニオイをかいでいた。取り引きさえ終わればもう用はない。6千円を数え、チンポをこすり始めた男を一瞥し、「またつながったらよろしくね~」と言ってあたしは車に乗り込んだ。

 パンツ1枚で6千円。今までやってたことがバカみたいに思えた。

 こういうやりかたのほうがよっぽど稼げる。

 帰り道コンビニによって新しいパンツと、マニキュアを全種類買った。久しぶりに自分で稼いだお金。トイレでパンツをはいて、あたしは家に帰った。

 家に着いて真っ先にシャワーを浴びた。痛くなるまで体を洗う。自分の部屋に戻ったとたん、体が震え出した。あたし、すごいことしちゃったかも・・・

 震える手で、さっき買ったマニキュアを取り出す。ピンクに黄色、赤、水色、ベージュ・・・。カラフルなその色は、あたしのパンツの何倍もの価値があるように思えた。体の震えは止まっていた。赤色を選んで塗ってみる。きれいに飾られた指先は、今日のあたしの勲章だった。

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―※―

 電話の向こうで精子をぶちまけた後で男が言った。

 「ねえ、パンツってどうなってる?」

 「えっ?」

 「濡れてる?」

 あたしは脱ぎ捨ててあったパンツを拾い上げた。たいして濡れてはなかったけど、「すごいグチュグチュしてる」と答えた。

 「それさぁ、売ってくれない?」

 「は?」

 「5千円でどうかな?ミカちゃんの都合のいい場所までとりに行くからさ」

 一瞬考えて、答えた。

 「いいよ。じゃあ駅前の本屋の駐車場は?」

 「OK。入り口のところで立ってるよ。黄色いTシャツ着てくから、声かけてくれる?ミカちゃんの目印も教えてくれるかな?」

 「ん~、ロングヘアで、赤いメガネ。それにカモフラ柄のミニと黒のロンT。で、わかる?」

 「了解!はいてきて目の前で脱いでくれたら、6千円出すよ」

 30分後、ということで電話を切った。6千円。迷いや抵抗は全くなかった。こんな3枚千円で買ったようなボロいパンツが6千円になるなんて!

 あたしはマン汁を乾いたパンツにこすりつけた。スプレーで少し水をかけてみる。なかなかいい仕上がりになった。あたしはそのパンツをはいて、こっそりと家を抜け出した。

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