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2008年11月

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 夜の病院。時間外受付。蛍光灯がジジジ、と音をたてている。こんな時間にもかかわらず、待合室にはけっこうな数の人がいた。血は、もう止まっていた。痛みは全くなかった。ほどなくしてあたしは名前を呼ばれ、診察室に入る。医者は傷を見て、「これは、ちょっと縫わなきゃね。」と、看護士になにやら指示を出す。

 「麻酔するからね。ちょっと痛いよ。」

 そう言って、傷口の周りに注射を打っていく。チクっとした痛みを一瞬感じたが、それすら自分のものではないような気がした。あたしは傷口をただ見つめていた。医者は器用に離れた皮膚と皮膚とを縫い合わせていく。ぱっくりと開いていた傷口は閉じられ、変わりに黒い糸が目立った。ゲジゲジみたい。他人事のようにそう思った。ガーゼを当て、包帯が巻かれる。

 「何か、あったの?」

 傷口ではなく、あたしの顔を見て医者がたずねた。

 「薬、なくて。今日、診察だったんだけど、来れなかった。」

 医者はカルテを開き、何かを書き足した。

 「とりあえず、3日分、同じ薬を出しておくから。その間に精神科のほうを受診してください。それから、明日外科に来れるかな?傷の具合を診たいんだけど。」

 あたしは礼を言って診察室を後にした。

 

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-7-

 2週間後、予約の時間を過ぎてもあたしは部屋から出られなかった。「行かなきゃ」とは思うのに、どうしても外に出ることができなかった。仕事から帰ってきた母はそんなあたしを見てものすごく困った顔をした。あたしはとても悪いことをした気持ちになり、「あたしなんか死ねばいいのに」と思った。薬をのんで眠りたかったが、薬はなかった。病院に行かなかったんだから当たり前か。代わりにカッターを手に取る。勢いをつけて、思いっきり左手に振り下ろす。皮膚がぱっくりと開き、白いぶつぶつしたものと血管みたいなものが見えた。次の瞬間、ボトボトと血が滴り落ちた。

 「いやぁーーーーーーーーーっ!」

 気がついたらあたしは叫んでいた。久しぶりに自分の声を聞いた気がした。

 飛び込んできた母が、血だらけのあたしを見て固まる。

 「なんで・・・なんでこんなことするの!ねえ真由子!」

 仕事から帰ったばかりの父は、パニックになっている母と、血まみれになっているあたしを見比べて「とにかく、病院に行こう」と言った。

 

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